第37章 動き出した黒幕
晩ご飯を食べたあと、私は今後どうするのかを話した。実弥と離れて暮らすと言うことに驚いていたが、私の決定を尊重してくれるとのことだった。
「じゃあ、今日は二人とも帰ったほうがいいわねえ。出産まで一緒に暮らせないならねえ。」
なぜかおばあちゃんが照れていた。お言葉に甘えて、帰ることにした。
もうたくさん話した。話すことはないってくらい。
けど、車に乗り込んで、誰も見えなくなったところで私たちは揃ったようにため息をついた。
「「はあああああああああああああああああああ」」
ずっと気を張っていたから、一気に力が抜けた。
「よかった」
私は涙ぐんでそう言った。
「…こんなことになって、本当にごめんな」
「あ、泣かないでよあなた今運転してるんだから」
「……」
実弥はそれでも浮かない顔をしていた。
「大好きだよ」
私は笑ってそう言った。
「……俺も」
実弥はようやく少し元気を出したみたいだ。
久しぶりに一緒に住んでいたマンションまで戻り、私たちは車から降りた。
「大丈夫か?気分悪くなってないか?」
実弥は過保護にそう聞いてきて、荷物も全部持ってくれた。
「平気だよ。」
「…そうか」
そう言うと、安心したのかふっと微笑んだ。
今日はドッと疲れた。早く部屋に戻って寝たいな〜と思っていると、マンションのエントランスに大きな人影が見えた。
ここの住人かな、と思っていたがそれは違った。
「あ?先輩じゃねえか?」
実弥がそう言った。
「本当だ!おーい、天晴センパーイ!!」
久しぶりに見たその姿に、私は大きくぶんぶんと手を振った。すると、先輩は弾かれたように振り返った。
その様子を見て、ただごとではない気配がした。しかし実弥は気づかない。私が足を止めた時にようやく不自然さに気づいたらしい。
「霧雨ちゃん!!!」
天晴先輩は私の元まで駆け寄ってきた。
そして、目に溢れんばかりの涙を溜め、血の気のない真っ青な顔で言った。
「春風が…っ、春風がッ!!!!!!」
嫌な予感がした。
私は、何もできずにただ先輩の話を聞いていた。