第3章 夢の中
実弥から怒っているのか、何なのか、よく、わからない感情が伝わってきた。
「もう頑張るな、こんなことになってまで、我慢してんじゃねェ」
私はキョトンとして触れる実弥の体温を感じていた。
あたたかい。安心する。実弥が側にいるとすごく強くなれる気がする。
「なァ、お前の事だから、せっかく用意してくれたとかわざわざ食べさせてくれるからとか、色々そんなこと考えてるんだろうけど。」
実弥が私の頬に手を添える。
私の顔を包み込むように手が触れた。
実弥が悲しそうな顔で私を見つめていた。
「気絶してまで頑張ることなんざしなくていいんだよ」
あぁ、そんな顔しないでほしい。そんな悲しい顔しないで。そんな、切ない気持ちにならないで。
「ご、めん………」
私はようやく声がまともに出せるようになった。
「私、まだ夢の中みたい」
無意識的に言葉が出た。なぜそんなことを言ったのか、と言われたら答えられない。
ただ、がむしゃらに駆け抜けた夢の中の記憶が鮮明に頭に浮かんだ。
「………」
あぁ、ひどく。ひどく疲れた。
もういいかな。眠っていいかな。皆のところに…。
あぁ違う違う違う。
皆はここにいるから。大丈夫。ほら実弥はここにいる。
頭がごちゃごちゃする。
まだ夢から抜けられない。
「……大丈夫。俺が守ってやるから。何があっても。側にいる。ここにいる。夢の中になんて行かせない。」
「………。」
実弥の声が頭に響いた。
私はまどろみに誘われて、静かに目を閉じた。