第28章 欠けたところ
『一緒に死んでみいひん?』
……。
『どうせ俺の方が早死にやし。長く生きすぎるよりかはいいんちゃう?』
彼は本気だった。
私はその言葉に頷いた。
『そうだね。』
『ほな、どこがええかな。』
カラカラ、と風の帯にさされた風車が回った。
『のほほんと旅を続けるより、目的がある方がええやろ。』
彼は言った。
『死ぬための旅か。』
『うん。』
『…別に、私に合わせなくても。君は生きればいいんじゃない?』
『うーん、刀を打たんでええようになった時点で俺の命も用無しやしな。一緒に死んでくれたら嬉しいんやけど。』
私はその言葉にまた頷いた。
『じゃあ、行ってみようか。』
『?どこかええ場所あるん?』
『うん。』
私は答えた。
『海がいいかな。』
汽車で南に向かって移動した。
道中、駄菓子を買って二人で食べた。
数年間続いた旅の終わりがようやく見えてきた。
汽車の中の人たちは平和に時間を過ごしていて、その姿に思わず笑顔が溢れた。
海にはすぐについた。私たちは砂浜に足を運んだ。
『うわ、ぐにゃぐにゃする』
彼は歩きにくそうだった。その様子が不憫で、手を取って歩いた。波打ち際まですぐに到着した。
『おおー!広いなっ!』
彼は私よりはしゃいでいた。
ニコニコ笑って水に足をつけた。
『…ねえ』
楽しそうな彼に声をかけた。
『生きていくのは苦しい?』
私の質問に彼は笑顔を消した。
『……そうかもしれん』
『そう』
『けど、あんたみたいに鬼になりたいとも思わん。』
素直な彼の言葉だった。
『まあ、別にええけどな。』
『…』
『ただ、人間の俺が死んだ後、鬼のあんたを一人に残すよりかは一緒に死のうかなって思っただけや。俺の身勝手やからな。付き合いきれへんって思うなら、それでええよ。』
彼はバシャバシャと水の中に足を踏み入れる。
『待ってください!』
気づいた私は手を伸ばす。
その時、不自然に水かさが増した。一気に私の胸まで水が這い上がり、彼の姿を消していく。
『待って!お願い、行かないで!!』
『さようなら、バイバイ。』
『死んじゃやだぁ!!!』
水の中に彼が消えた。
それと同時に、私も水の中へ沈んでいった。