第24章 私はどこの誰
優鈴が言った色々あるけど、というのは十中八九鬼舞辻無惨のこと。
…大丈夫。大丈夫だと思いたい。もう誰も傷ついてほしくないから。
でもとりあえずは昨日陽明くんに言われた通りに動こう。絶対来るように言われたから、ひとまず将棋部の部室に行かないと。
…ここからそんなに遠くない、はず。
今思い返してもあの子は不思議で、恐ろしい子だった。あの子は私が優鈴のところに行くことも言い当てたんだ。
春風さんもたまにそういうことやるけど……予知みたいに、ちょっと先の未来の予知が一瞬見える程度だとと聞いたことがある。…それでも十分すごいけど。春風さんの力に似てるのかな?
……。
うん。考えるのやめよう。さっぱりわからん。
将棋部の部室の前は静まり返っていた。
…相変わらず、文化祭であろうとなかろうとこの部室は人気がないらしい。
扉の前に立った時、部屋の中に誰かの気配を感じた。どこかで感じたことがある。…これは、誰だ?
本当に昔。はるか昔に出会った。
気配は確かに感じるが、限りなく薄い。…気配を消しているんだ。多分一人じゃない。
…気配は二人分。しかもこの二人を私は知っている。
只者ではないとわかる。この扉を開けない方がいいのではないか、と思った。だが開けなければと本能が叫んでいた。
霞守くんの言葉の意味がわかった。
私は、思い出した。
この気配の二人が、誰のものなのか。
その瞬間、私は扉を開けていた。頭で考える前に体が動いていた。
悪い癖が出たのかもしれない。けれど、私にこの状況を見過ごすことはできなかった。
「…誰だ?」
狭い将棋部の部室で、ソイツは巨人のようなオーラを放っていた。さっきまで気配を消していたくせに、すごい変わり身だった。
「………なぜ、お前がここにいる…!!」
全身の毛が逆立つほどの、心の底から湧き上がる怒り。目の前が真っ赤に染まるほど抑えが効かない。
「無惨!!!」
赤目の男は、前世と何一つ変わらぬ笑顔で私を見つめていた。