第3章 夢の中
「座った!!」
先生が手を叩いて喜ぶ。私を支える看護士さんたちも笑って私に嬉しい言葉をくれた。
「良かった良かった、気絶しないのは初めてですね!」
「う、ぁあ、う」
「大丈夫大丈夫。呼吸して。」
私は息を吸って吐き出した。くらくらするけど、大丈夫。
今日は誰も来てないけど、私はようやく座ることができた。看護士さんの補助つきだけど。
けれど、それもなくなる。
「手、離しますよ。」
看護士さんのうち一人がそう言って、皆離した。
桜くんに集中力が足りてないと言われたので、私は全集中の覚悟で体に力を込めた。
「わ、すごいすごい。座ってますよ霧雨さん。」
「う、ううぅぅぅ…」
私は血管から隅々まで集中力を巡らせた。
内臓、筋肉、骨。私の全てに。
「ッ!!!!!」
とある場所を見つけた。
座るときに体を支えていた場所。使っていた筋肉。私はそこに体重を乗せた。
「はっ、はっ、はぁ」
肩で息をして、私は体を落ち着かせた。
「せ、せんせい」
「………はい…。」
「わ、わた、わた、わわ、わたし、す、すわ、わって、すわって、ます、すか」
急に全神経を極限まで使い込んだせいで頭がぐらぐらしたし呂律も回らなかった。
「座ってます。座ってますよ霧雨さん。すごいです…!本当にすごいですよ!!」
先生が笑顔で言う。
看護士さんたちも笑っていた。
私は笑えもしなかったが、ようやく成し遂げた座るという行為に達成感を覚えていた。