第19章 鬼殺隊の次は
「泣くなよ」
実弥がふっと吹き出した。
「お前に泣かれると弱いんだ」
昔からな、と実弥は一言付け加えた。
「というわけで今から電話をかけます」
「待ちやがれ」
二人で話し合った翌日、私は見合い相手(仮)に電話をかけることになった。
しかし実弥は仕事。そこで助っ人を呼んだ。
目の前でこめかみをひくつかせて怒りが爆発寸前なのは親友の優鈴だった。
「おいお前だけじゃなくシンダガワからも頭下げられて家に呼ばれたかと思えば何だこの状況は」
「だって実弥が仕事でいなくて心細いんだもん」
「だからって僕も呼ぶ?」
「桜くんは圧倒的癒し要素。マイナスイオンの生産よろしく。」
「僕からは二酸化炭素しか放出されないよ。」
桜くんがおはぎを抱っこしながら文句を垂れる。
他人になつかないおはぎもこの二人にはすっかり慣れてくれた。飼い猫が皆に愛されるのは嬉しい。
「でも不死川さんがさー、僕らにお願いするのってほんと珍しいよね。…ちょっとは信頼されてたってこと?」
「さぁ。………。」
二人はじいっと私の顔を見つめて、はあっとため息を吐き出した。
「お見合い相手への電話を見守るとか何罰ゲーム?」
「マジでどーゆー状況だよ」
「……ごめんてば」
「さっさと電話して終わらせてよね」
桜くんに催促されて、私はポチポチとダイヤルをスマホに入力した。
そこでピタリと手を止める。どうも電話をかけるための最後のボタンが押せず、いったん深呼吸しよう…とそう思った。
「遅い」
「えっ」
しかし、優鈴がそのボタンを押してしまった。
私が抗議の言葉を叫ぼうとしたとき、電話が繋がってしまった。やばい切らないと、と思った瞬間。
なんと、相手はワンコールで電話に出た。