第16章 疲弊
有一郎くんの一件から一週間ほど。
私たちは穏やかな日々を過ごしていた。私は相変わらず後遺症を引きずっていたけど。
「やああぁぁぁぁぁぁぁぁぁだぁあああーーーッ!!!」
どうも。私25歳、成人してます。
でも赤ちゃんみたいに泣きわめいています。
「…お、おいおい、落ち着いてくれ。な?頼むよ…。」
「やだ!やだやだ!!やだあああああ!!」
私は実弥にしがみついてわんわんと泣いている。
「今日は私と約束してたのに!」
「いや、けど仕事が…」
「私と仕事どっちが大事なの!?」
「………はァ」
私はぎゅっとしがみついて離れなかった。実弥は途方にくれて立ち尽くしていた。
特に目的もなかったが、外に出たかったので一緒に遠出する予定だった。
しかし、実弥が私との約束を忘れて他に予定を入れてしまった。仕事の用事があるらしい。そちらを外せないから今日の予定を無しにしたいと言われ、私がギャン泣きしている…という状態だ。
「ああん、うああん、あり得ない!ひどいひどい!!私のことなんてどうだっていいんだああ!!」
「そんなことないって。大切だよ。」
実弥が困り果てていた。
私もどうしてここまで涙が出るのかわからなかった。けれど異様にイライラするし、悲しくてたまらなくなるし、ただ泣き叫んでいた。
そこで出てきたのは嫌な言葉だった。
「実弥なんて知るか!永遠に寝ててやる!!今度は目覚めないからね!!」
ふいっとそっぽを向くと、実弥が急に静かになった。ピリッと変な空気を感じてすぐに顔の向きを戻した。
「言って良いことと悪いことがあるだろ」
実弥が言う。怒っているわけではないみたいだった。けれど、だからと言って楽しんでいるわけでもない。
……気分が悪い。
そう言いたいのが伝わってくる感情からそれがわかった。
「バカ!」
売り言葉に買い言葉でそう言うと、実弥は何も言わずに出て行った。
ムッとしたまま私は部屋の中を歩き回り、おはぎを無言で撫でた。その時、お腹に違和感を覚えた。
……。
まさか、と思い私はトイレに駆け込んだ。