第94章 現代版柱稽古
こちらの稽古が終わっても、優鈴の方はまだ終わっていなかったらしい。
実弥がいないと帰れないので、終わるまで待つことにした。
帰っていく炭治郎くん、善逸くん、伊之助くん、縁壱さん、蜜璃を見送って木陰に腰掛けていると、隣にしのぶが座った。
「姉さんを待つので、私もここにいていいですか?」
「いいよ。」
「ありがとうございます。」
ニコリと笑うしのぶの指先には一羽の蝶がとまっていた。なんだか超屋敷を思い出す。
「最近はどうです?お体の具合は…。」
「元気だよ」
「嘘ですね。霧雨さんが元気だった時なんてありませんでしたし。」
じゃあなんで聞いた、と思いつつ苦笑した。
「姉さん、寂しがっていましたよ。霧雨さんが逃げるように失踪するから。」
確かに、最近カナエと話していない。
…中学生の時、毎日のように遊んでたくさんおしゃべりしたのが嘘みたいだ。
カナエだけじゃない、みんなと楽しく話していたのが嘘みたい。
なんでこうなったのかとも思うけど、やはりその原因は私で、私のせい以外のなんでもない。
「じゃあ寂しがらないように、しのぶがそばにいてあげて。」
本心からの言葉だったが、しのぶは驚いたように目を丸くしていた。そしてきっと目を釣り上げた。
「それ、本気ですか?姉さんは霧雨さんのことすごく心配していたんですよ。」
「……」
「あなたっていつもそうですよね。いつも勝手で、気付けばいなくなって、知らないうちに誰よりも傷ついてる。心配もさせてくれないなんてあんまりです。」
その話をされるとぐうの音も出ない。
「もういなくならないでくださいね。」
しのぶは私にもたれかかってそう言った。
なにも返せずにいると、呆れたようにしのぶが笑った。
「ここで『うん』って言わないから嫌われるんですよ」
「………そうだね」
「でも私ふくめて、みんなあなたのことが大好きです」
私はその甘い言葉にそっと微笑んだ。
……………。
そんなの、今のうちだと思うけど。