第92章 夜露死苦
ぐったりとして自室で休んでいると、部屋に実弥が入ってきた。
「飯は?」
「ううん、大丈夫。」
「いるかいらねぇかを聞いてるんじゃねえんだよ。食え。」
「………」
そう言って実弥は机の上にご飯を置いた。
「ありがとう」
湯気がたつ野菜炒めを見てひとまず礼を言った。…本当にお腹空いてないんだけどな。
さらに驚かされたのは私の向かい側に実弥が腰を下ろし、自分も食事を始めたことだ。
「…君も食べるの。」
「お前一人で食ったって不味いだろ。子供は珠世先生に見てもらってるから大丈夫。巌勝は喚いてる時透と霞守つれて帰った。」
「……ああそう。」
そう言いながらおかずを口に運んだ。
「で、話し合いはどうなった?」
「…一応一段落ついたよ。」
「片付きそうか。」
「……それは私がやることじゃないかな。」
「はあ?じゃあ誰がやるんだよ。」
んー、と首をひねった。
「皆で決めると思う。」
「みんな?」
「うん。…私一人で決まることじゃない気がするから。皆を呼んで話し合いをするの。」
私の話を聞いて実弥は目を見開いた。
「それ…結局お前が矢面に立たされるだけじゃねえの。」
「……………違うと思う。」
首を横に振って一度箸を置いた。
「………私は桜くんが心配。」
未だに連絡が取れないあの子を思うと胸が痛む。けれど、やはり最後に責任を持つのは本人、
「俺はお前が心配」
「んむ」
実弥は私の口にプチトマトを突っ込んだ。
「ふぁふぉふぉふひはい??」
「過保護すぎないかって?お前が自分のこと省みないんだから俺が心配してんだよ。」
「…優しいね。」
つい他人事のようにそう言ってしまった。ハッとして顔を上げると、実弥は青筋を立てて怖いくらいキレイに笑っていた。
「そう思うならちょっとは自分に優しくなれよ。」
「………ごめんなさい。」
実弥から目をそらし、再び箸に手をつけた。