第88章 明けない夜はない
__私はずっと
____________ずっと、みんなが繋いでいてくれた手を
「!!立て!!!」
巌勝の手を握り返す。
ぎゅっと。
それだけで、巌勝は驚いて私を振り返った。
「あの人は私なの」
「…は?」
「私なの。私、大正時代からずっと生きてるの。私、鬼になって、そのまま死ななかったの。」
巌勝は目を見開く。
「あの人は私」
私は立ち上がる。
「あの人をどうするかを決める義務が私にはある。」
「何をするつもりだ」
「………全部…私がやる」
「っ、お前はまたそうやって一人で…!!」
「それで」
私は、青い空を見上げた。
「それで、実弥と赤ちゃんに謝りに行く。」
「…」
「大丈夫。帰り道を歩く体力は残す。」
そう言うと、巌勝はあの人から奪った木刀を私に投げた。
「ならば勝て。お前と地獄を歩くつもりは毛頭無いからな。」
「……」
私はぐっと手に力をこめた。
「ありがとう」
その一言を残して私は走りだした。
嘘みたいに体が軽い。あぁ、でもきっといまだけだろうな。終わったら立てないくらい辛くなるんだろう。