第86章 ノスタルジー
まあ、こんな形であれ思い出の品を見るとみんなテンションが上がるものなんだな。
「とっても懐かしいですねぇ、まるで時代が巻き戻されたみたいですよ!!」
「ヤダ〜!!完全再現じゃない!!」
「あー、そういえばそんなんだったっけ?」
「懐かしー!初期のやつじゃん!」
大興奮のみんなを見て実弥はキョトン。
「え?は?初期?」
「魔法使い少女みたい!」
「くるっと回って!」
「きゃーかわいい!!シャッターボタン止まんない!!」
「似合う似合うー」
1人取り残された実弥は頭にはてなマークを浮かべていた。
「そうか、実弥は知らないのか。」
そこで私はハッとした。もちろんみんなも。
「実弥、これ私の1番最初の隊服のデザインなの。」
「………え」
「…そうだね…最後の隊服のデザインに変えたの、悲鳴嶼先輩が入ってくる頃だったから他のみんなも知らないのかな。」
私はんー、と考えを巡らせた。ええと、なんで買えたんだっけな。覚えてる限りだと…。
「そうだ、煉獄くんが集中できないって言われたからデザイン変えたんだ。」
「は?煉獄?」
「うん…槙寿郎殿のところにね、行った時にはっきり言われたの。彼、まだ新人隊士だったんだけど、『布の面積が少なくないだろうか!』って。」
「……はあ。煉獄が。」
「そんなにダメだったかな。私は気に入ってたんだけど。」
ペラリとスカートをめくると、実弥は自分が着ていた上着を私に投げた。痛い。チャックとか金具とか当たって地味に痛い。
「やめろ!それ以上その服でうろつくな!!着替えろ!!すぐ着替えろおォ!!!」
「いったい、ひどい、何するの」
「お前らも!!撮った写真全部消せ!!あとすぐに前田に連絡入れて俺につなげろ!!!!!」
実弥に引き摺られて奥の部屋に連れていかれ、
「着替えるまで出てくんなァ!!」
と怒鳴られてピシャリと扉を閉められた。
…いったい何があったと言うのか。
実弥が怒るとわかっていれば問題ないのだが、今の私はその予兆をつかむことさえできない。
こうして1人で畳の上に座り込んでいると、なおのこと頭が働かなくなってくるので私はさっさと着替えた。