第5章 街へ
「なっ!?煉獄さん!!」
「名前!喋っていると舌を噛むぞ!」
そのまま屋根伝いに進んで街を駆け抜け、人外なスピードで走り続けた煉獄さんは、空が藍色から闇色に移る頃、蝶屋敷に到着した。
行きの半分に満たない時間で移動出来た訳だが、当然の事ながら私はグロッキー状態になった。
「ただいま戻った、胡蝶!」
「まあ、随分と遅かったですねぇ、おかえりな、さ・・・煉、獄、さん?」
私のぐったりとした様子を目にしたしのぶさんが、ビキッと額に青筋を浮かべて煉獄さんに微笑む。
「これは一体どういう事ですか?」
「うむ!少し遅くなってしまったから走って戻って来た!」
「・・・で?」
「少々飛ばし過ぎた!すまん!」
ゴゴゴゴゴ・・・と、しのぶさんから聞こえる筈の無い音が聞こえてきそうだ。
「煉獄さん?私、言いましたよね?名前さんを連れて行かれるなら、遅くなる前に戻るようにと。仮にも彼女は今日、短時間とはいえ昏倒した経緯があるんですよ」
「う、む・・・しかしだな「しかしもかかしもないです」むう」
つい最近、似たような光景を目にしたなぁと思いつつ、今日はちょっと庇う気力がないので「ごめんね煉獄さん」と心の中で合掌した。