第9章 修行
ワハハと声を立てて笑うと、杏寿郎さんは表情を改めた。
「うむ、戯れはこの辺にして本題に入ろう」
「本題?」
えーと、今のやり取りは冗談だったのかな。
悋気って確か、ヤキモチの事だよね?
え・・・杏寿郎さん今、私と槇寿郎さんが仲良さげな事に対してヤキモチを妬いたの?
「名前、俺はあの話を父上と千寿郎にしようと思う」
「この世界の事ですか?でも、しのぶさんや他の柱の人に伝えようとしても駄目だったんですよね?」
それってつまり、まさか、杏寿郎さんが私の事を・・・!?
ぅわああああ~!
「うむ。これは、運命から外れた者だけが認識出来る。門前で千寿郎は俺の言葉に反応していたから、父上も恐らくは同様だろう」
「え、お二人共いつの間に・・・じゃあ、これからの事で協力して貰えるかも知れませんね!」
待って待って、もしかしたら私の勘違いかも知れないし。
だってほら、戯れって事は冗談って事でしょ?
でもそうだったとしたら、嬉しい、な。
「うむ!・・・ところで君、さっきからずっと百面相を繰り広げているが、大丈夫か?」
ギクッ。
思考と言動が、それぞれ別々に独り歩きしてしまった様で、それがそのまま顔に出ていたらしい。
「そ、そんな事ナイデスヨー」
「・・・」
うっ・・・そんな曇りなき眼で私を見ないで、杏寿郎さん!
今の私はポンコツで色々と駄目なんです!
「杏寿郎、お前が話したいと言うのは先程触れた件か」
「はい。続きを父上と千寿郎に是非聞いて頂きたく、お願い申し上げます」
槇寿郎さん、ナイス!ファインプレー!
見事に杏寿郎さんの意識を逸らして頂き、ありがとうございます。
「ハァー・・・名前、君については後で話そう」
「!?」
あ、逸らされてなかった。
ですよねー、流石は杏寿郎さん!