第7章 協力者
踵を返しベッドから離れようとした杏寿郎は、クイッと羽織りを引かれて足を止める。
「む?」
「・・・」
「名前?」
杏寿郎に名を呼ばれた名前は、自分が無意識に彼の羽織りの端を掴んでいた事に気付いてハッとする。
「あっ・・・ご、ごめんなさい・・・私っ!」
慌てて手を離そうとしたが、何故か自分の意思とは裏腹にその手は羽織りを掴んだまま震える。
「どうした?」
杏寿郎は羽織りを掴んで離さない名前の手をそっと握り、もう一方の手で彼女の頭を優しく撫でた。
すると名前の目から、ポロポロと涙の雫が溢れ出した。
「あ、あれ・・・何、でっ・・・っ」
「無理に我慢する必要はない。泣きたいなら泣けば良い」
「・・・っく・・・ふうぅ・・・」
「おいで名前」
杏寿郎はベッドに腰掛けると、本格的に泣き出した名前を自分の膝に乗せて抱き締めた。
名前は杏寿郎の肩に顔を埋めて子供の様に泣きじゃくり、たまに噎せては杏寿郎に背中をトントンとあやす様に叩かれた。
「ヒック・・・」
暫くして泣き止んだ名前は、杏寿郎から借りた手拭いでグチャグチャになった顔を拭い、赤く腫れぼったい瞼を隠す様に俯いた。