第7章 協力者
一時的に記憶の戻った名前から求められた事の一つが、協力者を作る事だった。
杏寿郎の中で、これは可及的速やかに達成すべき事柄となっている。
人選も委されており、杏寿郎は勝手ながら柱の中でも特に頭の良い胡蝶しのぶを、その内の一人に数えたいと考えた。
さて、しのぶは名前が杏寿郎に語った物語の中で、幾つかの重要な役割がある。
知っての通り彼女は鬼殺隊の医療における第一人者であり、その存在は無くてはならない者だ。
また、主人公達に全集中"常中"を習得させ、上弦の弐を毒で弱体化させる事や、逃れ者の鬼の珠世と協力して鬼を人間に戻す薬と、鬼舞辻無惨を倒す為の複合薬を開発する事を為し遂げる。
特に後の二つは重要で、これが欠ければ物語は完結しないであろう。
では、如何にして事を運べば、彼女を運命から外せるのか。
「君が姉君を大切に想っている事は分かった。姉君を殺めた鬼を許せない事も。その上で俺は君に願おう!今すぐ毒の摂取を止めてもらいたい!!」
どこまでも真っ直ぐな杏寿郎は、正攻法でしか攻略出来ない。
だから、思った事をそのまま伝えた。
「無理です」
当然の事ながら、それはしのぶに一蹴された。
よもやよもやである。