第10章 いくつかの誤解
唖然としている様子の私に気を使ってくれたのだろうか。
マリッジブルーなんて良くある事です、旭さん。また改めてご連絡差し上げますね。
そう言ってすっと女性が席を立った。
女性を目で見送った後和泉さんがこちらに向き直った。
「本当は今日、軽く俺の家で顔だけでも合わせておこうかなとも思ってたんだけど」
やっぱり距離が離れてると色々あるよね、彼はもう一度私に謝り、苦笑しつつカップを持ち上げ口をつけた。
遥さんと同じに広い肩に大きな手。
印象は全然違うけど顔もそもそもの骨格、というか造りが似ている様な気がする。
『何故あの時電話で、遥さんが弟だと黙っていたんですか』
ふと、そんな問いが口から出かけた。
いや、そもそも遥さんの話が本当じゃなかったら?
余り仲が良くない様子の二人。
二人が兄弟だとしても、和泉さんが私に踏み込んで欲しく無い事情があるのは確かだ。
そして……そしてそれは、私と遥さんの関係を和泉さんに話すと言う事だ。