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Honeymoon

第10章 いくつかの誤解


「旭ちゃん」

突然名前を呼ばれて我に返った。

「そんな事より会えて嬉しいよ。 向こうでもずっと君の事考えてた……旭ちゃんもそうだと嬉しいけど」

彼の指先が私の手に軽く触れてきた。

喉の奥がつんと傷んだ。
こんな私にそんな言葉は勿体な過ぎる。


「和泉さん…私は」
「少し色々考えてて、あ。 ごめん、旭ちゃんから」

二人の声が重なって、和泉さんが私の先を促した。

「あ、いえ。 和泉さんから」

「うん、ありがと。 えっと、出掛けの前日の事、覚えてる? 指輪贈った時」

「はい」

和泉さんが何も付けていない私の左手にちらりと目をやった。

「そうやって色々旭ちゃんを悩ませてしまったのは、やっぱりあの時煮え切らなかった俺の責任で……今日は出来れば、明日の朝まで一緒にって思ったんだけど」

「……………」


その言葉を、もう少し早く聞きたかった。

だけど和泉さんのせいじゃない。

どんな理由があろうと悪いのは私だ。


口を開いたら泣きそうな気がして無言のまま頷いた。





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