第10章 いくつかの誤解
「結婚を前提に考えて欲しい」
三度目のデートで和泉さんからそう告げられ、たった数日後に海外出張が決まった。
三ヶ月という期間は案外長い。
悩んでいた。
25歳という自分の年齢、仕事の事。
二人の時間を重ねる毎に居心地の良さを感じていた。
和泉さんは何処へ行くにもいつも私を一番に考えてくれる。
そんな彼を大切にしようとすると何倍もの『大切』を与えてくれる。
そんな関係性が出来そうな予感がしていた矢先。
そう、友人の香織が言う通り、断る理由が無いのに悩んでいた。
出張の前日の事だった。
いつも通り寛げるお店を選んでくれてそこで食事をした帰り。
「出来るなら、旭ちゃんの気持ちを聞いてから行きたい」
そんな彼に言った。その前に、何か支えになるものが欲しいと。
「明日は……休日ですし」
目を伏せて小さな声でそう言った。
それまで彼は私に触れていなかった。
和泉さんは、本当は私をどう思っているのだろうか。
女性としての私を求めてくれているのだろうか。
和泉さんは何も言わなかった。
……はしたないと思われているのだろうか。