第5章 その日から二週間
翌日に私はまだ痛む体を引き摺って産婦人科に向かった。
その場でバラすと脅されたとしたら、断り切れる自信がなかった。
そしてあの男なら言いかねない。
テーブルの上の処方された白い錠剤をもう一度眺め、溜息をつく。
身を守るために妊娠しなければいいのだろうか。
和泉さんを煩わせないよう黙っていればいいのだろうか。
「違う、そうじゃない……」
だけどあの人、橘 遥。
こちらが機嫌を損ねる前まで少しは優しかった。
あんな風に異性に抱かれたのは初めてだった。
どんな風にと言われても困るけど、あの耳を塞ぎたくなる声は嘘じゃない。
そんな気持ちを少しでも抱えたまま、和泉さんに告白出来ない。
もう一度、あの男に会ってみよう。
じゃないと私は動けない。