第4章 一夜…恐れと嗜虐
「…ッく」
男が呻き私に覆い被さるようにベッドにかがみ込み、それを抜く。
は…と数度息をして私の腰に熱い熱が押し付けられた。
同時にそれよりも熱い液体が私の背中に散って肌を焼いた。
ようやく止んだ嵐に私は動けないでいた。
男も何も話さなかった。
暫くしてまたパチン、と音がし窮屈なベルトが私から外された。
「あ……」
やっとまともに空気を吸えた気がした。
確かに私は彼のいう事を聞かずに和泉さんの名前を口にした。
だけど、この人はなんでこんなに怒ったのだろう。
男が座っていたベッドから離れたみたいであたりに静寂が訪れた。
隣の部屋からだろうか、衣擦れの音が耳に届く。
外の静かな様子から真夜中の喧騒を過ぎた辺りの様だった。
「俺は出掛けるが、動ける様になったら勝手に帰れ」
「…………」
私が眠っていると思ったのだろうか、彼はそれきり何も言わなかった。
私の肩の、肌にかかる柔らかい毛布。
目を閉じている内に涙も乾いてきた。
やっと帰れる……のだろうか。
今は体が鉛の様で動けない。
戸口の辺りから沈んだ彼の声が聞こえた気がした。
『 ……あまり酷くする気は無かった』
だけどそんなのはおそらく気のせいだ。