第11章 朝を待つ間
体が沈み過ぎそうで怖かったのでその手前に小さくお尻を乗っけた。
「この度は迷惑を掛けたそうだね。 じき和泉が帰国する。 その前にね」
当初三ヶ月と聞いていた和泉さんの帰国が延びていた。
会った時、どういう顔をしようかと悩んでいた。
正直な所もう関わりたくなかったのが本音なのだけど。
「向こうで過ごさせるのがいいのかも知れないが、あいつは目の届く所に置いておかないと厄介でな」
困り顔で溜息をつくその人は、自分の孫の色々な事情を知っている様だった。
「遥から頼まれてる。 和泉が戻ったら君がやりづらいだろうと。 うちはいくつか関連の社や支店を持っているが、良ければそちらの方を紹介する。 勿論これはうちの方の責任だから、それなりの待遇も用意する」
「遥さんが……?」
自分の中で時を止めていた人。
その名を聞いて再び気持ちを引っ掻かれたように心がざわついた。
「あの子が私に頼み事をしたのは初めてでね。 君の事が余程心配らしい。 複雑な事情はあるが、私にとって遥は単なる可愛い孫だからね。 それに、和泉の事を看過してるのは息子だけの責任では無い」