第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
千「おかえり…な…さ………、」
大まかな帰る時間のみを伝えていた為、千寿郎は杏寿郎の腹を見て固まってしまった。
無駄に心配させるだけだと思っていた為 桜達は杏寿郎の鳩尾に風穴が空いたことを言うつもりはなかった。
しかし隊服は特別頑丈な生地であった為に医療用の針で満足に縫う事は叶わず、応急処置に充てられた頼りない布は煉獄家に着いた時にはどこかへ落ちてしまっていたのだ。
その隊服に空いた穴の出口があるのかどうかを確かめようと千寿郎は冷や汗を流したままタタッと二人の元へ走り寄る。
「…千寿郎くん……?」
千寿郎が狼狽して返事も出来ないまま杏寿郎の後ろに回り込み 炎柱の羽織りをそっと捲ろうとした時、その行動の意図に気が付いた杏寿郎はくるっと千寿郎に向き直って自身の腹を隠す様に桜を下ろした。
杏「実を言うと朝餉をまだ食べていないので今すぐにでも倒れてしまいそうだ!!千寿郎、用意を頼んでもいいか!!」
杏寿郎が千寿郎の頭を撫でると千寿郎は何も言わずにこくりと頷いて屋敷の中へ走って行った。