第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
途中から気が付いた桜も振り返って杏寿郎の隊服を見つめながら眉尻を下げる。
「分かられてしまいましたね。」
杏「うむ。だが何も言わなかった。千寿郎も覚悟をしているのだろう。」
「はい…。でも…、あとで抱き締めてあげて下さい。杏寿郎さんならではの熱い体温と大っきな心臓の音、感じさせてあげて下さい。」
桜が数時間前に味わった感情を思い出す様に目を伏せながらそう言うと 杏寿郎は少し目を大きくさせてから眉尻を下げて優しい笑みを浮かべた。
杏「うむ、分かった。」
―――
杏「父上!只今帰りました!!」
「ただ今帰りました。」
槇「ああ。」
槇寿郎から返事を貰うと杏寿郎はパッと嬉しそうな笑みを浮かべてから閉まっている襖へ頭を下げ 立ち上がろうとした。
しかし桜は思い詰めたような顔のまま留まり、それに続かなかった。
杏「………桜?どうした。千寿郎が朝餉を用意してくれている筈だ。食べに行こう。」
しかし桜はその言葉に従わず、眉尻を下げながら杏寿郎の袖を掴んで座る様に促す。
「………槇寿郎さん。」
桜はぐっと拳を握ると襖を真っ直ぐ見つめた。
「……今日こそは開けていただけませんか。」
杏寿郎は大人しく座るも桜の固い声に少し目を大きくさせて首を傾げる。