第36章 任務同行
「私の時代では…、太陽の光を再現する技術があるんです。」
その言葉に三人分の同じ色の目が大きくなると桜は慌てて両手のひらを皆に向け首を横に振った。
「と言ってもそれは一般家庭で作れる簡単なものではないんです!その上 私が書き記した物は太陽光の中の一部の光の作り方で…作れるのかも それのみで鬼に効くのかどうかさえも怪しいんです。」
「…なので情報だけお渡しして後はお館様に全て委ねる事にしてしまいました…。」
元々手紙をこっそり置いてきた自身の行動に不誠実さを感じていた桜は説明しながら後ろめたさに更に眉尻を下げたが 槇寿郎は不愉快ではなく不可解そうな顔を向けた。
槇「お前、字を書けたのか?一昨日は読めなかっただろう。」
杏「そうなのか!!」
「う"っ」
桜は赤い顔でただ不思議そうにしている槇寿郎を見ると小さく息をついて少し眉を寄せる。
「読み書きが出来ないわけではないんですよ。漢字の形が違うとは思いますが楷書で書いたのである程度通じるかと…それに………、」
そこでハッとしたように言葉を切ると 桜は固まって何かを考えるような顔をしてから口を閉じた。
(女に学は必要ないって思われるかな…。もう女子大の前身は出来てる筈だけど槇寿郎さんはよく思わなさそう…。)
桜はUVランプを構成する物や説明について記す為に楷書の他に英語も用いていた。
しかし敬い立てるべき未来の義父である槇寿郎が英語に触れてこなかった可能性は高いだろうと判断し、女の身でありながら英語の読み書きが出来る事を明かすメリットはないと思い至り口を閉ざしたのだ。