第34章 緊急事態、柱合会議
(…五年前はどのくらい続いてたのかなんて分からなかった…こんな長かったんだ。小さい体でお腹を複数刺されたのなら…もうとっくに息を引き取ってる……。)
暫くして手を離し、眉を寄せている実弥を確認すると 頭に血が上り視野が狭くなっているユキは目を細めて再び手を乗せる。
ユ『次はもっと長い。七歳から十五歳になるまでの八年間、こちらも皆お前くらいの歳の男だ。そうだな、人数を数えると良い。私が記憶した数と答え合わせをしよう。ああ、十二歳からでいいぞ。十一歳でちょうど百人になったからな。』
柱の面々は何が起きているのか分からず ずっと黙って二人のやり取りを見ていたが、杏寿郎はその言葉を聞いて思わず立ち上がった。
杏「ユキ、やめてくれ。桜が気付いている。」
その言葉にユキがぎょっとしたように振り返ると桜はユキを心配するような顔をして首を傾げた。
「ユキ…そんな顔してたら悪い存在になっちゃうよ。言葉遣いもすごく怖かった。それに口で説明するより速い事は分かるけど……見せていいなんて私言ってない。」
その言葉に項垂れるユキに小さく息をつくと実弥に目を遣る。
「不快なものを見せてごめんなさい。あの傷と…あと三分の一くらい抉れた頭を治した事があります。皆さんと比べたらとても少ない数ですが、人がどう壊れるのかは見てます。それから…、」
そう言うと今度は天元を見つめる。
「足手まといは仰っしゃる通りです。具体的にどの様に私が同行するかについてはお館様からご提案があるので聞いて頂けますか…?」
桜は尻尾を下げてとぼとぼと戻ってきたユキを軽くペチッと叩きながら天元が頷いたのを確認し、話の主導権を返すようにお館様を見上げる。
その様子を感じ取るとお館様は微笑みながら頷き、天元への返事に当たる自身が考えていた事について話し出した。