第33章 準備期間
「きょ…杏寿、」
杏「うむ!!やっと普段の恥ずかしがり屋の君に戻ったな!俺も愛しているぞ!!」
赤い顔に向かってそう嬉しそうに言うと 杏寿郎は桜の額に軽く口付けして柔らかく微笑んでから満足そうな顔で目を瞑った。
桜はその顔を暫く愛おしそうに見つめていたのだった。
―――
「……はぁっ……はっ……、」
桜は息を切らして熟睡している杏寿郎に口付けをするとフッと力を抜いてその胸に顔を埋めた。
(今回は私が悪い……何も言わないでおこう……。)
―――この桜の遠慮が "一度恐怖を覚えると桜の体の熱はなくなる" という誤解を生んだ。
千「兄上ー!姉上ー!!いらっしゃいますかーっ!!」
千寿郎の呼び声にビクッと体を揺らすと桜は布団から出て振り袖の元へ走り、昨日買ったばかりのハンカチで汗を拭う。
そして急いで着付けると杏寿郎を起こしてもらう為に千寿郎を迎えに玄関へ行った。
「ありがとう!杏寿郎さん起こしてもらってもいいかな…?私の声だと起きないんだよね…。」
千「はい!任せてください!!」
少し得意気な様子を桜は微笑ましそうな表情で見送った。
(一人でする為に杏寿郎さんに口付けをした後ろめたい気持ちが顔に出ちゃうかも…先に戻ってお膳並べておこう…。)
そう思うと桜は千寿郎に杏寿郎を任せて離れを出た。