第32章 ※ちぐはぐな心と体
杏「そうか。では…、」
そう言って体勢を変えようと腕を解放した時、杏寿郎は他の男に対しても少しも抵抗出来そうにない桜の華奢な背中を見ながらふと嫌な想像をしてしまい、眉を顰めて固まった。
動きがなくなった杏寿郎を不思議に思って桜が口を開こうとすると、杏寿郎はまた腰を動かし始める。
「え!?……きょ、杏寿、」
杏「今だけ俺を他の男だと思ってくれないか。」
杏寿郎はそう低い声で短く言うと桜がどんなに声を掛けても応じなくなってしまった。
桜は杏寿郎の考えている事が分からず暫くただ揺すられて息を乱していたが、焦れた杏寿郎が男の欲に忠実な酷い扱いをし始めると動揺して瞳を揺らした。
『他の男だと―――』
その痛みも感じる程荒い行為を受けながら杏寿郎の言葉を思い出すと、知らぬ男にそうされているような錯覚に陥り桜の背筋は途端に寒くなる。
「や……や、だ………、」
杏寿郎は他の男に襲われた時も桜の体は気持ちに反して喜ぶ反応をしてしまうのかを知りたくなり、揺すられ震えている桜をじっと見つめていた。