第31章 ※歩み寄ること
「は、はい…。」
杏「俺も一緒に入って良、」
「しーっ!だめに決まってます…!」
女「れ、煉獄さま!?いつの間に帰っていらっしゃったのですか…!他の鬼狩りさまに煉獄さまの事をお訊きしても知らないと仰っしゃるので何かあったのかと…!」
(茂雄さん、隆史さん…何で知らないなんて……。)
そう首を傾げると杏寿郎は微笑んで桜の耳元に口を寄せた。
杏「坂本が暫く二人切りになれるよう気を回してくれたようだ。頼勇さんの事はあの二人も聞いていたからな。」
そう言って桜の額に口付けを落とすと杏寿郎は襖の方へ顔を向ける。
杏「こちらに急ぎの用があったので不躾と分かりながらも門を通らずに中庭へ直接入った!!申し訳ない!!」
女「門を…通らず……、あ、いえ…皆心配をしていただけですので問題ありません…。煉獄さまも支度が出来ましたらお声掛け下さい。ご案内します。」
呆けた声色の女の言葉を聞くと、一緒に風呂へ行けると知った杏寿郎はパッと表情を明るくさせて桜の風呂敷に向かって何かをし始めた。
一方、桜はその浮かれた様子を見て悪戯っぽい笑みを浮かべる。
杏「桜!早く行くぞ!!」
「はい!」
杏寿郎はそう言って桜の手を掴むと足取り軽く部屋をあとにした。