第31章 ※歩み寄ること
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夫婦ではない桜と杏寿郎は別々の寝室をあてがわれていた。
そして桜はユキの姿になると一人残された部屋を出て自分の部屋へ行き、ユキの体で呼吸の鍛錬をして過ごしていた。
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「………ッ!!…はぁ……、」
(うぅ…痛いー…怠ったからかなあ……。)
むせそうになって我に返ると、桜の物と思われる膳が部屋に置いてあり、布団も敷かれている事に気が付いた。
それに近付こうとした時ユキの体が悲鳴を上げる。
(どうせ人の姿に戻らないとご飯食べられないし…、声を掛けずに部屋へ入る人もいないよね。)
そう思いながら人の姿に戻ると、はたとある事に気が付く。
「………わ、私、行方不明って事になってないかな…大丈夫かな……。」
箸を手に取りながら独り言を言うと部屋の外から声が聞こえた。
頼「水琴ッ!?どうやって中に…ああ、良かった…。」
「よ、頼勇さん………?ずっとそちらに…?」
独り言に反応がきて桜は酷く動揺しながらも、ずっと心配させてしまった事を申し訳なく思って眉尻を下げた。