第29章 大神さまの正体と目的、暴力の訳
「存在………?」
ユ『ああ。私が今こうして目の前で話しているから思い違いをするかもしれないが、私を一番色濃く留めているのは桜の胸だ。それに桜は私と対等だろう。神ではないとはいえ、私は人でもない。』
ユ『桜が生き物として人でなくなった訳ではないが、存在は稀有なものになっている筈だよ。とは言っても、存在に見合った待遇などはないが。』
それを聞いて桜は喉をこくりと鳴らす。
「存在に見合った待遇…。も、もし…それがあれば……私は暴力を振るわれた時、身を守れたのか、な………。」
その小さな声を聞いてユキは考えるように目を細めた。
ユ『仮に、…そもそも不可能だが、神相手に暴行などをしようものなら もちろん罰が当たる。それが神である存在への待遇だ。でもそれがない桜に暴行をした場合は罰が当たらない…、』
そこまで言うとユキは言葉を切って目を見開く。
ユ『……待て。桜にだって暴行など本来なら容易にできて良い行為ではない……それなら、あの者達がしたのはただの暴行ではない…もっと……不可能な…理に反する異例の行為だ…………そうなら…あの固執した異常さは……その原因は…もしかすると………、』
話しながらみるみる動揺していく様子を見て、桜は青くなってユキの体を力強く抱き締めた。
「ご、ごめんなさい!…ユキに責任を感じさせる結果になるなんて…興味なんて持たなきゃ良かった……。本当にごめんね…もういいの。今は杏寿郎さんがいる。だからどうか胸に留まったこと後悔しないで…お願い……。」
そう必死に請われるとユキは何も言えなくなり、謝るような、慰めるような、ただただ優しい頬擦りを桜に繰り返した。
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