第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
『見つかった!?』
『いえ…。何事もなくお帰りになると良いのだけれど…。』
『もう一度あの場所へ行ってみましょう!…ああ、見ていられないわ…。もう二年も経つのに…。』
『本当に…不憫な旦那様…。』
心配する言葉と共に足音が遠ざかっていった。
それを聞いて二人は自然と顔を見合わせる。
「盗み聞きみたいになってしまいましたね。」
杏「うむ。代わりと言ってはなんだが、見つかるように願っておこう。」
桜はこくんと頷くと杏寿郎を見習って目を閉じた。
―――
「あ!山の手前が一ノ瀬家の土地なので、あれがこの時代の一ノ瀬家ですよ!!」
そう嬉しそうな声を上げるとちょうど一ノ瀬家の門が見えた。
杏「君が育った家ではないと分かってはいるが何故だか胸が高鳴ってしまう!!」
その楽しそうな声に桜は眉尻を下げて笑う。