第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
「わっ!きょ、じゅ、」
杏「絶対に落とさないが念の為しっかり首に捕まっていてくれ!!」
桜は大人しく頷くと首に手を回してしっかりと体をくっつける。
そして過ぎていく風景や杏寿郎の背中に隠した綺麗な刀の柄をぼんやりと見ていた。
(もしユキの体を借りれなくなったら…私足手まといになっちゃうな…。)
「……杏寿郎さん、そういえば一ノ瀬家にいきなり行って大丈夫でしょうか…?」
そう問うと杏寿郎は眉尻を下げる。
杏「先程要を飛ばしたが間違いなく俺達の方が先に着くな。しかし抱きかかえたままのんびり歩いては注目を浴びる。恥ずかしがり屋の君には酷だろう。任務で出ている訳ではないので先に連絡するのが礼儀だが…。それに鬼殺隊だと信じてもらえるだろうか。」
杏寿郎はそう言って自身の着物の袖を見て眉を寄せた。
その様子に桜は眉尻を下げて笑う。
「杏寿郎さんが炎柱の煉獄杏寿郎さんだという事は風貌を知る者なら一目で分かります!追い返されることはないでしょう。日輪刀もありますしね。」
杏「そういえばそうだったな!『悪鬼滅殺』の字も入っている!」
(日輪刀よりも杏寿郎さんの髪色の方が分かりやすいんだけどな…。槇寿郎さんの事も知っている家だし…。)
そう思いながら桜はまた微笑んだ。