第27章 仲直りとお買い物
奥「屋敷に入る着数ならいくらでも、だそうですよ。煉獄様のお屋敷でお店を開けてしまいそうだわ。」
そう冗談を言いながら新しい反物を用意する奥さんを桜は呆けた顔で見つめる。
その視線に気が付くと奥さんは微笑ましそうに見つめ返した。
奥「こんなに愛らしい奥様なんですもの。煉獄様にとって着数など些末なことなのでしょう。」
桜はそう言われると ぶわっと赤くなる。
それを見て奥さんはもっと微笑ましそうに笑った。
奥「それにしても驚きましたわ。お父様は愛妻家で有名でしたが、杏寿郎様は見合い話に応じた事がないという噂を聞いていましたので…。」
「噂……。お見合いの噂が街にまでそんなに簡単に広がってしまうものなんですか…?」
(ここも 老舗の立派なお店!って感じだけど、煉獄家にお見合いを申し込んできそうなお家とは層が違うような…。)
その問いに奥さんは眉尻を下げて罰の悪そうな顔をした。
奥「商人は顔が広いのです。裕福なお客様の屋敷へ呼ばれ そこで物を売る商人も多くいます。煉獄様の噂はそちらから盗み聞きしたものなのでしょう。私も同業者から聞きましたので…。」
「なるほど…、そうなのですね。」
桜の柔らかい声に居心地悪そうにしていた奥さんは顔を上げて首を傾げる。
それを見つめ返すと今度は桜が居心地悪そうにもじもじとした。