第24章 不思議な縁と晩酌
槇「………………そうか。」
杏「それから頭を撫でられたと興奮していたな!」
「はい!」
あの朝を思い出して二人は微笑んだ。
槇寿郎はそれを聞いて少し固まったあと、おちょこの酒をぐいっと煽った。
そんな風に自身が話題に上がった事を知らない千寿郎は、少し照れたような笑みを浮かべながらいそいそとつまみを持って居間へ入る。
千「時間がかかってしまうのでまだ出せませんが、後で鯛の昆布締めもお出ししますね。」
そう言うと千寿郎はふわっと笑った。
すると杏寿郎と桜が槇寿郎をじーっと見つめる。
槇寿郎はそれを見て露骨に眉を顰め、千寿郎はきょとんとして首を傾げた。
そんな槇寿郎に杏寿郎は大きな燃える目で更に圧を掛ける。
すると冷や汗を流し始めた槇寿郎は押しに負け、とうとう深く息を吐いた。
槇「千寿郎。」
千寿郎は槇寿郎に不機嫌そうな声で呼ばれビクッと体を震わせると招く手に向かっておずおずと歩み寄る。
すると槇寿郎はしばらく居心地悪そうな顔をしてから、視線は外したままであったものの千寿郎の頭に手を軽く乗せた。
すると―――、
槇「………っ!?な…、千寿郎………どうしたんだ……。」
撫でられた千寿郎はぼろぼろと涙を零してしまっていたのだ。
千寿郎はそう問われて我に返り、バッと顔を隠す。