第24章 不思議な縁と晩酌
杏(これだけでも凄い事だ。だから、剣士を辞めた理由まで聞くのは欲張りだという事は分かっている。だが…、)
それでも、これ程までに話せるとどうしても訊いてしまいたくなり 杏寿郎はもどかしく思っていた。
急に口を噤んだ杏寿郎を見て何を考えているのかを察した槇寿郎は気が付かない振りをする。
更にそれを見ていた桜は二人の気持ちが分かる故に複雑な気持ちになっていた。
「………お酒ばかり進んじゃってちょっと勿体無いですね。良いお酒なのに。」
悩んだ末、桜は杏寿郎に悪いと思いつつも当たり障りの無い事を言って話題を逸らした。
(杏寿郎さんごめんなさい。でも、まだ早いと思う…。)
そう心の中で謝ると、桜の言葉を聞いていたかのようにスッと台所の襖が開いて千寿郎がひょこっと顔を覗かせた。
千「あ、あの…、おつまみを作ったのですが……良かったら食べていただけませんか…?」
千寿郎は眉尻を下げに下げ、自信無さ気にしていたが 槇寿郎が無言で頷いたのを見ると ぱあっと明るい笑顔を浮かべた。
「…千寿郎くん、槇寿郎さんが前回のおつまみを全部食べてくれたって聞いた時、泣いちゃったんですよ。」
そう小さく伝えると槇寿郎はおちょこを見たまま目を大きくする。