第24章 不思議な縁と晩酌
杏「お館様がユキの姿で鬼殺隊に関わるときは癒猫様と呼ぶようにとお決めになられましたが、それは前からあった名なのですか?」
その言葉に槇寿郎は戸惑いを隠せず眉尻を下げて頷く。
槇「ああ…。俺があの家に関わったのはまだ柱になって間もない頃だ。その後、他の隊士から一ノ瀬家が鬼殺隊に協力してくれる事になったと聞いた。」
槇寿郎は言葉を切ると桜をちらっと見て少し気まずそうな顔をした。
「…そして、あの家に行くと怪我の治り様がおかしいとすぐ話題になった。」
それを聞く三人は心当たりにハッとした。
槇「治るはずのない傷も治ったと聞いた。そしてそれが裏山に祀られている癒猫様のお陰なのだと皆口を揃えて言っていた。…当時の隊士なら殆どの者が知っていたと思うぞ。」
桜は速い脈を抑えるように自身の胸に手を当てる。
槇「俺も気になってはいたのだが、何しろこの家が近かったから世話にならずにいた。そして顔を出す前に、裏山に雷が落ちて死人が出た。…その後、癒猫様の話は皆しなくなった。傷が治る藤の家の噂もなくなった。」
胸の温度はまた不安定になってしまっている。
その胸に当てた手をぎゅっと握ると桜は眉尻を下げた。