第23章 ※愛し方
五分も経たないうちに幸せな空気を壊したのは杏寿郎だった。
杏「桜!!!母上にご報告をしたらすぐに鍛錬の続きをするぞ!!!!」
「はい!!!!」
千寿郎はまだ涙の残る顔で "信じられない" という顔を二人へ向けた。
千(兄上も兄上だけど、迷わず返事をする桜さんもおかしい…。)
その視線に気付かない二人は、楽しそうに千寿郎をわしゃわしゃと撫でると 呆気なくその場を後にしてしまった。
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一方、槇寿郎も自室でこそばゆいような満たされたような気持ちを味わっていたにも関わらず鍛錬の声が響いてきた為 開いた口が塞がらなくなった。
槇(…理解出来ん。きっかけを与えない限り、杏寿郎は桜を鍛錬にしか呼び出さないのではないか…。きっかけを与える………か…、)
そう思うと槇寿郎は眉を寄せ、自身の意地と戦うような顔をした。
―――
「杏寿郎さん、そういえば私の鴉が行方不明なのですが何か知っていますか?」
三時間ほど経った頃、二人は千寿郎と共に縁側に座っていた。
杏「ああ、確かに見ないな。連絡事があれば来るはずだが、こちらから飛ばせないのは些か不便だな。」
桜はそれを聞いて首を傾げる。
(どこで何を…誰かのところにいるのかな…それなら早く伝言してくれればいいのに……。)