第3章 新しい世界
すると意外なことに、少年は肩を揺らしたものの落ち着きは取り戻している様子だった。
そして何か言いたそうに口を開けたり閉じたりしている。
(大きいもん…普通怖いよね…。)
そう思いながら首を動かし自身の体を見る。
(やっぱりユキの体だ…。こうして横になればこの男の子の身長くらいあるんじゃないかな…?)
少年の身長は幼い顔の割に大きく160cm程だ。
小さく息をついてまた少年の方を向くと目が合う。
そして少年から感じる空気が恐怖ではなく緊張である事に気が付き、ハッとした。
(もしかして……怖くて話しかけられないんじゃなくて、話しかけて良いものなのか悩んでるんじゃ……?)
神様なだけあって、この姿はただ大きいだけじゃなく 物の怪じゃないとひと目で分かる神々しさがあるのだ。
「あの…、」
少年は驚いたようにピシッと背筋をのばす。
「……か、勝手にお邪魔してすみません…。」
桜は間の抜けた事を言いながら ちらっと少年を伺うと、髪の毛と同じ色の目がみるみるうちにキラキラと輝いていった。
少年「…あっ!いえ!お気になさらないでください!!」
(よかった…怖がってない…!それどころ目がキラキラしてて可愛らしい…。)
姿形は違うけれど、弟を思い出す。
「私、一ノ瀬 桜といいます。あなたは…?」
他に説明すべきことはたくさんあるような気がしながらも、なんとか会話をしてみる。
千「れ、煉獄千寿郎といいます!」
(古風だし難しい名前…。どういう漢字なんだろう…。)
そう思いながら千寿郎と名乗る少年を見つめると、あまりにも一生懸命な様子だった為 桜は微笑ましそうに目を細めた。
「そっか、素敵な名前だね。」
そう落ち着かせるように柔らかい声を出すと "もう大丈夫かな" と思い、桜はゆっくりと体を起こした。