第16章 目覚めた女と諦めない男
歩こうとした際 桜は杏寿郎にぐいっと腕を引っ張られ、バランスを崩す。
「わっ!…な、にするん……っ…!」
杏寿郎の方に倒れ込みそうになって目をぎゅっと瞑ると、ふわっと抱きとめられる。
杏寿郎はそのまま桜を横抱きにすると胡座をかき、その中にすとんと落とした。
桜は目をぱちくりとさせるも、すぐにハッと我に返って立ち上がろうとする。
だが、杏寿郎が勿論それを阻止した。
杏寿郎は桜の肩と頬を掴み、強制的に顔を上げさせると真剣な目を向ける。
杏「確かに猫でないのなら男女が同じ布団で寝るのは良くないな。」
そう言っているのに杏寿郎の熱い手は肩をがっちりと掴んで離してくれない。
「そ、そうですね。あの…なので部屋に戻ります、ね……。」
杏「…ああ。」
はっきりとした返事とは裏腹に、杏寿郎はやはり動かなかった。