第95章 続々と
「…え………そんな…接触する機会なんてそんな事…、」
そんな事は、勿論『ある。』だった。
今の時代、子育てに参加する親は母親だけではない。
桜のように専業主婦にならず共働きをしている母親は多いしシングルファザーの親もいる。
そして子供同士が親しくなれば親も自然と話すようになるものだ。
杏「………あるのか。」
杏寿郎はまるで浮気を知ったかのように呆然としながら呟いた。
「そ、れは…だって、あの子達が仲良くしてるお友達のお父さんなので………『どう過ごしていましたか』…なんて……訊かれれば、答えないと…………、」
空いてしまった妙な間に杏寿郎は嫌な予感を抱き眉を顰める。
杏「他の話題もあったのではないか。君の事だ。いつの間にか話題をすり替えられていたのだろう。いつから関係の無い話をするようになった。どの様な話だ。」
(何で…どうして杏寿郎さんはいきなり……、)
「いつからかは…分からないです。話は……、話は、その………、」
そう言い淀む桜の眉尻は下がりに下がり、母親らしい落ち着いた雰囲気ががらがらと崩れていく。
今 杏寿郎の目の前に座っているのは付き合っていた頃の危なっかしい桜のようだった。