第73章 二人の成敗
そんな甘々の会話をスキャンダル好きな目ざとい女生徒達が見つけない筈もなく、陰でキャーキャー言いながら聞いていた。
それに杏寿郎は気が付いていたが、怒られると思った為 桜の名前は出さなかった。
ただ―――、
杏「そうだ、こちらであれと同じワインレッド色のリボンを見つけて買ったんだ。あれは流石に古くて使えなかっただろう。昔のようにハーフアップに結って付けてもらいたい。」
相手の名前や職業こそ出さなかったものの 具体的なリボンの色と髪型を指定し、ギリギリ言い逃れ出来る状況を作ったのだ。
『嬉しいです…。必ず使いますね。』
スマホから聞こえてくる桜の声はどこまでも嬉しそうだ。
杏寿郎はその声を愛でるように目を細めた。
「下の方、下の方……これとかかな。」
桜はまだ見た事の無い杏寿郎の服を引っ張り出すと ぽすんっと顔を埋めてみる。
すると杏寿郎の匂いに包まれてぶわっと顔に熱が集まった。
(こ、これは…とても心強いかも……!すっごく杏寿郎さんの匂いがする……!!)
桜はシャワーを済ませると迷った挙句、杏寿郎の服を抱くのではなく直接着てしまった。
すると杏寿郎に包まれているような錯覚に陥る。
(これなら寝れるかな……。)
桜は前の家から持ってきていた大きな抱き枕をベッドの上に置くと ぎゅうっと抱き締めて杏寿郎を思い出す。
(…体温が無いのが寂しい……。私 杏寿郎さんに依存しちゃってるな……。)
そう思いながら桜は杏寿郎の熱い体を思い出し、なかなか寝付けなかったのであった。