第13章 お館様
「人の姿は失くしたわけではありません。ただ、緊張した時や、ユキが必要だと判断したとき、ユキが姿を貸してくれるようです。意識して借りる事もできますが………その、きょ…煉獄さんの前だと人の姿に戻れません…。」
桜の気配が変わったことに親方様は少し驚いた顔をしたが、相変わらず穏やかな空気は壊れない。
親「それは何か心当たりがあるのかな。」
「恐らく…私が元々若い男性が怖いからだと思いま、す……あれ………?」
(親方様だってまだ若い…ユキ…どういうこと………?)
親「そうなんだね。私の前で元の姿になれたのは、私がこの立場だったからかもしれないね。その使命を全うするには、私とは腹を割って話さなければならない。隠し事は命取りになるからね。」
桜は、"確かに…" と思いながら頷いたが、引き合わせてくれた杏寿郎だって特別な協力者だ。
(ちょっとユキは杏寿郎さんに厳しすぎるんじゃないの…?)
親「それから…、ここに来てくれた事、それを桜が力を貸してくれるという意思だと捉えて、これからの任務同行について詳しく考えていきたいと思う。」
親「…いいかな?」
「はい!!そのつもりで来ました!!!」
親「ふふ。桜は杏寿郎の影響を受けているようだね。……ひなき。杏寿郎をここへ連れてきてきてくれないか。」
ひ「わかりました。少々お待ちください。」
襖の外から先程の女の子の声が聞こえた。
(杏寿郎さんと一緒に話すんだ…。)
そう思って肩の力が少し抜けるとすぐに杏寿郎が来る。
杏「失礼致します!!」
桜はこの場でなら人のままでいられるかもしれないと思ったが、その声が聞こえた途端にやはり猫の姿に戻ってしまった。
少しがっかりする桜を尻目に杏寿郎は丁寧な所作で隣に座る。
杏寿郎が座ったのを感じると、親方様はこれからについて話し始めた。