第66章 拗れる
桜をベッドに座らせ改めて見つめると2年分だけ少し大人っぽくなった姿に愛おしい気持ちが生まれてきてしまった。
杏(やはり……優しく抱こう。きっと彼にはそう抱かれた事しかないのだから。)
そう思うと杏寿郎は床に膝をついて桜の頭を撫で、頬に手を当てながら優しくキスをしようとした。
しかし、このタイミングで体調を崩したと思っている桜がキスを拒んだ。
杏「………何が気に入らなかった。彼と比べたか。」
「どういう意味、ですか?あの…とりあえず離れて下さい。」
杏「楽になりたいのだろう。」
(確かに移したら治るっていうけど根拠がないし…。)
「楽にはなりたいですが、でも……、その、煉獄先生にさせる訳には……。」
杏「構わない。優しくするので頼ってくれ。」
そう言うと杏寿郎は桜をベッドに寝かせて覆い被さり、再びキスをしようとした。
桜は何度も避けようとしたが杏寿郎はなかなか逃してくれない。
(このままじゃ杏寿郎さんまで体調を……、)
「あ、あのっ、私、タクシーで帰ります…っ!」
その言葉に部屋がしんと静まり返る。
暫くしてから杏寿郎が上体を起こし、ベッドが軋んだ。