第61章 戻ってきた世界
「お父さん、お母さん、本当にありがとう。…それから………みのるにも挨拶させてほしいの…。ずっと会わないでいたから…。」
その言葉に両親が固まってしまったのを見ると桜は困ったような笑みを浮かべた。
「心配しないで。死んじゃいそうになったからかな…今まで忘れてた事、全部思い出せたの。それに、きちんと受け止められてる。」
由「桜……。」
「2人にはとても辛い思いをさせてしまいました…本当に……本当に本当にごめんなさい。」
―――『パラレルワールドは存在しない。』
バランサーの言った通り、桜の胸にユキが居なくても桜が暴行を受けた過去は変わらなかったし、みのるが生きている世界もなかった。
しかし、『暴力がもう無くなる、桜は普通の女性になった』という不思議な確信が3人の中に芽生えていた。
勇「桜が謝る必要なんて全くないよ。1番酷な目にあったのは桜だ。…おいで。」
優しくそう言って勇之は桜を両親の寝室へ連れていきベッドサイドテーブルの下の扉を開いた。
「ここに隠させちゃってたんだ…ごめんね、みのる……。おねえちゃん、20歳になったよ。」
桜はそう呟くとあどけなく笑うみのるの遺影に触れてから手を合わせた。