第61章 戻ってきた世界
無惨が消滅した後、桜は大正時代から現代の川の中へと戻された。
桜が川で助けた少年は自分達を岸に上げてくれた男に桜の事を話してくれた。
その川は幅はあるものの深さは2メートル程と浅く、更に桜が着ていたものは鮮やかな赤い振り袖であった。
それでも男は川岸からパッと見て見つけられなかった為、救急車は一応2台呼んだものの桜を救う事は難しいと思っていた。
しかし橋上を通り掛かった女性が話し声から興味を引かれて橋下を覗き込むと すぐに桜の赤い振り袖を見付けてくれた。
そしてその女性が何かを探す様に川へ入る男に報告した事によって桜も引き上げられたのだった。
そして2台の救急車が来ると、バランサーにより温めた事を無かった事にされた少年と桜はそれぞれ病院へ運ばれたのだった。
少年が体温を失うまでにラグがあったのはバランサーの気まぐれであり、桜への褒美であった。
―――
(あったかい………―――さんがまた抱き締めてくれているのかな……。)
桜がそうぼんやりと思いながら瞼を上げるとそこには泣きながら自身に覆い被さっている母親の由梨の姿が見えた。
ベッドの脇には父親の勇之も涙をぼろぼろと溢しながら立っており、目が合うと慌ててナースコールを押した。