第57章 ※聞き分けとお返し
桜はずっと優しく褒めてくれていた杏寿郎にそのような笑みを向けられると眉尻を下げた。
当然嫌だから口にした言葉ではない。
(……撫でて、優しくして欲しい。)
「嘘つかないから…意地悪しないで。」
杏「意地悪などしない。君が本当の事さえ言えばそれで済む話だ。君は "これ" をされて嫌だったのか?」
そう言いながら杏寿郎は腰をグリッと動かして最奥を擦る。
すると桜は容易く達し、その時の恍惚とした表情を見た杏寿郎は更に笑みを深めた。
杏「俺にはそう見えないが前にこういった事ですれ違ったことがあったのでな。良いなら良いと言ってくれないと不安が残る。もう一度訊こう。嫌だったのか。」
「ちが…、口から自然と出ちゃっただけで…、」
杏「ではどう感じた。」
杏寿郎は口を薄く開いて固まる桜の頬を愛おしそうに撫でながら言葉を待つ。
その間にも腰はゆらゆらと動き続け、桜は緩い刺激に耐えきれなくなると眉尻を下げながら杏寿郎を見上げた。
「…………気持ち良かった…です。」
答えは分かっていたが実際に素直な言葉を聞くと昂りの質量は増し、杏寿郎は速めたくなる腰をなんとか抑え込んだ。