第56章 戦いを終えて
杏寿郎は小道を抜け大通りから遠ざかると林の手前で止まる。
杏「桜、一体どうし、」
その時、林奥の気配に気が付いた杏寿郎はその独特な空気から固まってしまった。
桜はそれに気付かず首を傾げる。
杏寿郎は再び桜の手を握り直すと人が少ない方に向かって林沿いを歩き出した。
「杏寿郎さん…?」
杏「すまない。連れて来る所を間違えた。ここは人気の場所だったようだ。」
(人気……?)
桜が振り返ろうとすると杏寿郎が桜の手をくんっと引っ張る。
杏「見ないでくれ。淫らな行為をしている者が何組もいる。君の目に入れさせたくない。」
「……っ」
桜は状況を把握するとタタッと杏寿郎に走り寄り、ぴったりとくっついて歩いた。
そんな桜の頭を優しく撫でると杏寿郎はもう一度『すまない。』と謝る。
それに桜は首を横に振った。
「いえ、ありがとうございます。でも前にも見ちゃったことありますし…そんなに謝らなくても大丈夫ですよ。」
桜が空気を和らげる為にそう言うと 杏寿郎はガッと桜の細い肩を掴んで顔を覗き込んだ。
その剣幕に桜はたじろぎ発言を後悔した。