第56章 戦いを終えて
杏「そうか!では行こう!!」
「は、はい!!」
杏寿郎は内心首を傾げつつその店に入ると桜の様子を窺う。
すると桜も杏寿郎の様子を窺っていた。
桜は目が合うとハッとし、きょろきょろと取ってつけたように店内に目を遣る。
「色んなものが置いてあるんですね。」
杏「…雑貨店だからな。君の生活用品を買った時も雑貨店へ行ったろう。」
「そうでしたね…。」
(なんかプレゼントを買うようなお店じゃないかも。コートとか服も売ってるけど杏寿郎さんはちゃんと専門店でオーダーメイドの買ってるし…。)
桜が紳士用の帽子の前で小さく溜息をつきながら肩を落とすと杏寿郎は心配そうに指の背で桜の頬を撫で、何を考えているのか口に出すように促した。
しかし、秘密裏に用意して驚かせたかった桜はふるふると首を横に振った。
杏「帽子がどうかしたのか?帽子なら任務で使った物が家にあるぞ。」
「………そう、ですね。出ましょう。やっぱり特に欲しい物はなかったです。」
桜はそう言うと残念そうに微笑みながら杏寿郎の手を引っ張った。
杏寿郎はそれに大人しく従ったが店を出ると今度は桜を引っ張った。
そして桜は戸惑いながらもそれに付いて行った。