第56章 戦いを終えて
「素敵……これ…、すごく高い筈ですよ……。自分で買います。ずっとお給金は貯めていたので…!」
杏「そうしたら意味がないだろう!君が買ったとしても俺も別の箏を買うぞ!!」
「そんなあ…。」
決して安くはない品を取り扱っている店の主人はその会話を聞いて少し首を傾げる。
店(奥方は奥方で何か財を得られている方なのか。)
店「良かったらお弾きになられて下さい。」
興味を引かれた店主がそう言うと桜はパッと目を輝かせた。
「で、では…お言葉に甘えて…!!」
桜は店主から爪を貸してもらうと惹かれた箏の前にスッと膝をつく。
そして無難に古典的な曲を弾いた。
杏(こういった曲も弾くのだな。父上が好みそうだ。……ああ、店主に合わせたのか。)
視線の先で感心したように目を見張る店主を見て杏寿郎は誇らしさから口角を上げる。
杏(美しい音だろう、俺の妻の奏でる音は。)