第55章 遊郭に巣食う鬼
「男の人っぽくて格好いいなって思ったの。……あ、でも…、顔が鼻血まみれになるのは格好いいか微妙なところだなあ。」
そう笑いながら拭き終わると桶を持って立ち上がる。
そしてそのまま部屋を出ると杏寿郎も後についてきた。
(カルガモ……。もふもふのカルガモだ。)
杏「む。何故笑っている。」
「いえ……、ただ、好きだなあって思って。」
くるっと振り返って桜がそう微笑んだ時だった。
―――カーンッ バシャ…ッ
杏寿郎の目の前に居た桜が突如消え、持っていた桶が床に落ちた。
杏「桜ッ!!!…またか……いや、」
杏(竈門少年の声が聞こえた様子はなかった…何故だ。だが心当たりがあるとしたら信仰者であり普段から縁のある彼の元だ。)
し「煉獄さん!!桜さんに何かあったんですか…!?」
実「………………。」
玄関で情報交換をしていた二人が上がってきて落ちた桶と水浸しになっている廊下に眉を顰める。
杏「桜が連れて行かれた。恐らく遊郭だ。」
杏寿郎は低い声でそう言うと状況を飲み込めず眉を寄せる二人を置いてダッと走り出した。
杏(どういうつもりだ。こんな事が出来るのは……。桜は姿を消せないのだぞ。これは下策だろう!!)